1973年に発表されて以来、何十ヶ国語に翻訳されて世界的大ヒットを記録した異質な小説『箱男』
昭和の奇才”安部公房”が作り上げた独特な世界観を持つ作品がついに映画化決定!
映画『箱男』は、2024年8月23日から公開されます!
本記事は、『箱男』のあらすじやネタバレ、ネット上で飛び交う結末の考察をまとめました。
- 映画『箱男』とは
- 映画『箱男』の見どころ
- ネット上で飛び交う結末の考察
- 昭和の奇才”安部公房”とその代表作
- 上映予定の映画館
映画『箱男』とは
YouTubeで予告編が公開!
箱男の公式X(旧Twitter)をチェック!
あらすじ
社会からの逃避を図り、自らを段ボール箱に閉じ込めた男の物語
ある日、カメラマンの男性は箱男を偶然目にする。完全な孤立と孤独を得て社会から外れた箱男に心を奪われたカメラマンは、自分も段ボールを被り、箱男になろうとする。
彼は自分を箱に閉じ込め、社会から逃げるようにして街をさまよう。
やがて、現実と幻が入り混じり、彼が何を見ているのか、何を感じているのかが曖昧になっていく…
映画『箱男』公開前に知っておきたい!見どころ5選
① 箱の中から映し出す閉塞感や孤独感
映画『箱男』は、主人公が段ボール箱の中から世界を見つめるというユニークな視点を映像化していて、その視覚的な表現が印象的です。狭い視界や限られた視点から映し出される映像は、観客に閉塞感や孤独感を強く伝え、独特の世界観を創り上げています。
② 主人公・箱男の心理描写が胸に刺さる
主人公・箱男の内面世界が巧みに描かれており、彼の孤独や社会からの疎外感がリアルに伝わってきます。彼が箱の中で抱える思いや葛藤が、観客の心に深く訴えかけるポイントとなっています。
③ 現実と幻想が曖昧に交錯する世界観
現実と幻想が次第に入り混じり、観客に不安感を抱かせるような演出がされています。
この曖昧さが、物語の神秘性や謎めいた雰囲気を一層高め、強烈な印象を与えます
④ 誰もが感じる孤独感や社会への違和感が共感を呼ぶ
社会からの疎外や孤立という普遍的なテーマを扱っており、現代社会における人間関係や自己の在り方について考えさせられる内容です。主人公が箱の中で選んだ生き方は、誰もが感じる孤独感や社会への違和感を象徴しており、共感を呼び起こします。
⑤ 安部公房ファン必見!原作小説を忠実再現
安部公房の原作小説を忠実に再現していて、原作ファンも満足できる仕上がりです。哲学的なテーマや独特の世界観が、映画を通して新たな視点から楽しめる点も見どころです。
深いテーマと独特な映像表現が心に刺さる作品です!
小説『箱男』が賛否を呼ぶ5つの理由
① 物語の意図が掴みにくいからこそ広がる多様な考察
- 『箱男』は、非常に抽象的で哲学的なテーマを扱っている
- 物語の進行に一貫性がないため、読者によっては理解しにくく、物語の意図が掴みにくいと感じる方もいる
- 一方で、この難解さが作品の魅力だと感じる読者も多く、深く考察する楽しさを提供している
② 現実と幻想の境界が曖昧で、読者を混乱させる
- 作品中で現実と幻想の境界が曖昧になっている
- どこまでが現実でどこからが幻想なのかが不明瞭に描かれている
- この曖昧さは、作品の独特な魅力として評価される一方で、読者によっては混乱を招く要因ともなり得る
③ 明確な結末が存在しない
- 明確な物語の展開や結末が存在しないため、不満を感じる読者もいる
- この構造が、作品の独創的な部分として評価される一方で、ストーリー性を重視する読者には物足りないと感じる
④ 孤独と疎外感が強く描かれる『箱男』の重苦しい雰囲気
- 『箱男』では、主人公の孤独や社会からの疎外感が強く描かれている
- これが作品全体に重く暗い雰囲気を与える
- このテーマは、深く共感する読者には強く響く一方で、重苦しさが苦手な読者にとっては読みにくいと感じられる場合もある
⑤ 自己探求の深さが生む賛否両論
- 自己探求や存在の意義について深く掘り下げたテーマが、読む人にとって刺激的である反面、難解さや重さを伴うため、全ての読者が同じように受け入れられるわけではない
- このテーマに強く惹かれる人もいれば、ついていけないと感じる人もいるため、賛否が分かれる要因となっている
このように『箱男』は、人を選ぶ内容となっています!
【ネタバレ注意】ネット上で飛び交う結末の考察 5選
小説『箱男』の結末
小説『箱男』の最後は、主人公である箱男が現実と幻想の境界がますます曖昧になる中、自分が誰なのか、何をしているのかが不明確なまま物語が終了します。
結末の解釈は読者に委ねる形となっており、様々な考察がネット上で飛び交っています!
考察① 自己消滅か、箱との同化か?
箱男は最終的に自分自身のアイデンティティを完全に失い、社会からの完全な孤立を果たすことで自己を消滅させた。もしくは、箱そのものと同化してしまったという考察があります。
この考察は、存在論的な視点から人間のアイデンティティを問いかけています。
人間のアイデンティティは、他者との関係性や社会的な文脈の中で形成されるものであり、それが完全に失われると、自分が「誰であるか」という問いも消滅してしまいます。
箱男の「自己の消滅」は、社会から切り離された存在が辿り着く極限の姿であり、現代社会における孤立とアイデンティティの問題を象徴的に描いたものといえます。
考察② 自由と引き換えに失われる自己
箱男の結末は、社会や現実からの永遠の逃避と、その代償としての自己喪失を象徴しているという考察があります。
主人公は社会との接触を断ち切り、完全な孤立の中で生きる道を選びました。
自由を手に入れる代償として、孤独と自己喪失を受け入れ、自らの存在を徐々に消し去っていきます。
この結末は、現代社会におけるアイデンティティ、自由、そして孤独の問題を問いかけ、現実逃避の果てに待ち受ける自己喪失の可能性を強く示唆しています。
考察③ 箱男が選んだ幻想世界への閉じこもり
箱男は現実の世界に戻ることができず、幻想の世界に閉じこもる道を選んだという考察があります。
物語の終盤で、現実と幻想の境界が崩壊し、箱男の世界は完全に閉ざされたものとなります。
この考察では、箱男は現実の世界に戻ることができず、幻想の世界に閉じこもる道を選びます。
彼にとって、箱は現実と幻想を分ける唯一の存在となり、その箱の中が彼の新しい現実として受け入れられるのです。
考察④ 箱男が選んだ社会への反抗と挑戦
箱男の行動は、社会への反抗や挑戦と捉える考察があります。
彼は社会のルールや期待に従わず、自分の生き方を貫いた結果、社会から追放されたように見えますが、実際には彼自身がその追放を選んだとも言えます。
箱の中での生活は、社会の外側からその矛盾や問題を批判的に観察する行為としても考察されます。
考察⑤ 無限の輪廻
箱男が再び箱の中に閉じこもることは、彼の生の終わりではなく、新たなサイクルの始まりを示しているという考察があります。
箱男の生き方が一種のループとして続き、彼は永遠に箱とともに生き続けるという考察です。
この観点では、箱は終わりのない人生の象徴として捉えられます。
考察に正解はありません!
皆さんが一番納得のいく考察や、オリジナルの考察を生み出せることも『箱男』の魅力のひとつです!
昭和の奇才・安部公房とその代表作
プロフィール
- 1924年 東京府北豊島郡(現在の東京都北区)出身
- 「ノーベル文学賞に最も近い人物」と言われていた
- 1993年 脳内出血により急死した
代表作
- 『壁』(1951年)
『けものたちは故郷をめざす』(1957年)
『第四間氷期』(1959年)
『砂の女』(1962年)
『他人の顔』(1964年)
『燃えつきた地図』(1967年)
『友達』(1967年、戯曲)
『箱男』(1973年)
『密会』(1977年)
『方舟さくら丸』(1984年)
「シュルレアリスム(超現実的)」の先駆者
阿部公房の作品はあまりにも設定が現実離れしていて、「シュルレアリスム(超現実的)」と呼ばれています。現実の外にある「人間の深層意識」を巧みに描いています。
代表作
1962年『砂の女』
終わりなき砂の囚われ 逃れられない運命の中で問いかける生の意味
20数ヶ国語に翻訳された名作。
安部公房の超絶技巧を存分に味わうことができ、言葉では表現しがたい、砂の不快感を生々しく感じます。
物語の展開はほぼなく、描かれるのは砂に埋もれていく家……まさに蟻地獄の中で過ごす女と、男のやり取り、心情の変化が中心に描かれいます。
(1951年)『壁』
ある日突然、名前をなくしてしまったら?
安部公房の初期作品であり芥川賞受賞作。
ある朝、目を覚ますと名前がなくなっていた…
名前をなくした男が、狂乱し社会では生きられなくなった様子を描いています。
1964年『他人の顔』
誰もが持つ”顔”をなくした男の物語
顔をなくした主人公…
顔をなくすことで出てくる弊害……普段意識することのない「顔とはなにか?」「顔の重要性」などを考えさせられる奇作です。
安部作品のすごいところは、非現実的な作風にもかかわらず「もし自分がこうなったらどうするだろう?」と読者の不安を掻き立てるところ。
心をざわざわさせながら読み進めていくと、最後に起こったのは……?
上映予定の映画館
北海道
- 札幌シネマフロンティア
東北
- 岩手県 盛岡ルミエール
- 宮城県 MOVIX仙台
- 山形県 フォーラム山形
- 福島県 フォーラム福島
関東
- 東京都 TOHOシネマズ シャンテ 新宿ピカデリー ユーロスペース イオンシネマ板橋
MOVIX昭島 アップリンク吉祥寺 MOVIX亀有 オンシネマむさし村山 - 神奈川県 TOHOシネマズ上大岡 TOHOシネマズららぽーと横浜 109シネマズ川崎
イオンシネマ座間 シネプレックス平塚 小田原コロナシネマワールド
MOVIX橋本 - 埼玉県 MOVIX川口 MOVIXさいたま ユナイテッド・シネマ 新座 MOVIX三郷
イオンシネマ春日部 イオンシネマ羽生 シネプレックス幸手
ユナイテッド・シネマ ウニクス南古谷 - 千葉県 MOVIX柏の葉 T・ジョイ蘇我 USシネマちはら台
- 茨城県 MOVIXつくば
- 栃木県 MOVIX宇都宮 小山シネマロブレ 109シネマズ佐野
- 群馬県 MOVIX伊勢崎 シネマテーク高崎 イオンシネマ太田
甲信越・北陸
- 長野県 長野相生座・ロキシー 松本シネマライツ
- 石川県 金沢コロナシネマワールド
東海
- 愛知県 イオンシネマ大高 ミッドランドスクエア シネマ 伏見ミリオン座
ミッドランドシネマ名古屋空港 ユナイテッド・シネマ 豊橋18 MOVIX三好 - 岐阜県 大垣コロナシネマワールド
- 静岡県 MOVIX清水 シネマサンシャイン沼津 静岡東宝会館 シネプラザサントムーン
近畿
- 大阪府 イオンシネマ シアタス心斎橋 MOVIX堺 イオンシネマ茨木
なんばパークスシネマ 大阪ステーションシティシネマ - 兵庫県 MOVIXあまがさき 109シネマズHAT神戸 kino cinema 神戸国際
- 京都府 T・ジョイ京都 MOVIX京都 イオンシネマ京都桂川
- 滋賀県 イオンシネマ草津
中国・四国
- 岡山県 イオンシネマ岡山 MOVIX倉敷
- 広島県 イオンシネマ広島西風新都 福山駅前シネマモード シネマ尾道
- 香川県 イオンシネマ宇多津
- 愛媛県 シネマサンシャイン エミフルMASAKI
九州・沖縄
- 福岡県 シネプレックス小倉 ユナイテッド・シネマ なかま16
ユナイテッド・シネマ キャナルシティ13 - 熊本県 熊本ピカデリー
- 宮崎県 宮崎キネマ館
- 沖縄県 ミハマ7プレックス
最後に
2024年8月23日公開の『箱男』は、異質な世界観と現代社会における孤独やアイデンティティの喪失を鋭く描いた作品です。
この物語が投げかける深い問いに触れ、自分自身や社会との関わり方を改めて考えるきっかけになることでしょう!
一瞬たりとも目が離せない『箱男』の上映をが楽しみです♪